広汎性発達障害という言葉をあなたは耳にしたことがありますか？
実はこの「広汎性発達障害」は、2013年からだんだんと使われなくなった障害名なのです。
その理由は、DSM-5（ディーエスエムファイブ）というアメリカ精神医学会の診断基準があるのですが、そのDSM-5から広汎性発達障害はもちろんのこと、アスペルガー症候群、高機能自閉症（知的障害のない自閉症）、小児崩壊性障害（順調に成長していたものの、ある時から知的自閉症のような症状が発症する障害）の4つが「自閉症スペクトラム（ASD）」として統合されたからです。
私も少しまでは時々「広汎性発達障害」という診断名を耳にすることがあり、ちょっと違和感を覚えていましたが、この言葉が今もなお残り続けているのは、何かしらの医学的ニーズがあるからなのかもしれませんね。
さて、ここでは、自閉症スペクトラムのお話をメインにしながら、広汎性発達障害という言葉の意味についても考えていきましょう。
10分間おうち療育®️7日間無料メール講座
自閉症スペクトラムとは
広汎性発達障害を説明する上で欠かせないのが、この自閉症スペクトラムとは何か、というお話です。
まず、自閉症スペクトラムは「脳の機能障害」が原因だと言われていて、その根本的治療法は未だ見つかっていません。
子どもも大人も人によっては何かしらの服薬をしている場合もありますが、それは根本治療ではなく、対処でしかありません。そのため、本人に合ったサポートや教え方、伝え方などが必要です。
自閉症スペクトラムの困難を一言で言い表すと「対人関係の困難」があります。
相手のことを理解することが難しかったり、反対に相手が本人のことを誤解してしまったりすることが、生きていく上での大きな困難になってしまっているのです。
自閉症スペクトラムは、以下の3つの障害を併せ持っています。
この3つを抱えているからこそ、未来の見通しを立てることが難しかったり、喩えの表現をその言葉通りの意味として捉えてしまったりします。
つまり、目に見えないことを予測したり想像したり、深読みしたりする、ということがとても難しいのです。
自閉症スペクトラムと広汎性発達障害との相違
広汎性発達障害は、他の障害名とともに「自閉症スペクトラム」という言葉の表現にまとめられた、というお話をしました。
それを踏まえて考えると、以下の図のようになります。
2013年以前の４つの障害をまとめた言葉が「自閉症スペクトラム」ですから、上のような図になるわけです。
それぞれの4つの障害に共通することは「自閉症」があること。つまり、先ほどご紹介した3つの障害を同時に抱えているのです。
その中でも「広汎性発達障害」は、際立った特徴がなく、でも自閉症の症状がある、という場合の診断名として活用されていた印象があります。
実際、私がこれまで出会ってきたお子さんたちの中には「広汎性発達障害」という診断名があったのに、のちに「自閉症」という診断に変わったというケースもありましたし、そういうケースは珍しいことではありませんでした。
以上を踏まえて考えると、広汎性発達障害は「狭義の自閉症スペクトラム」「自閉症スペクトラムの中の一つの種類」と考えるのが妥当でしょう。
大切なのは診断名ではなくて今のお子さん
保護者の方の中には、診断名に振り回されてしまって、「結局のところ、うちの子はどんな障害なの？」と疲弊してしまっている方もいらっしゃいます。
確かに診断名は、重要なことだと思います。
でも、それ以上に大切なことを見失わないでください。
あなたのお子さんは、たとえ広汎性発達障害があったとしても、まずは一人の人間なのです。
大人が障害名に振り回されていると、子どもの人格を見失ってしまいます。
「広汎性発達障害だから」とか「自閉症スペクトラムだから」とか、そういうサポートは二の次で良いのです。
まずは、今、お子さんが何に困っているのか、どのようなことができるようになりたいのかを観察して見つけ出してみてください。
そうすれば、障害名がさほど重要でないことが分かります。
どうしてか、というと、私たち大人は、子どもが成長しようとしている時に応援したくなるからです。
その「応援」が見守りなのか、サポートなのか、それとも教えることなのかは、お子さんの「今」の状況によって異なります。
ですから、私たちサポーターは観察力を養う必要があるのです。
養われた観察力であれば、お子さんが心地よく成長できるサポートをすることができます。
それは、発達障害があるとかないとか、そういうことは全く関係がない、望ましい子育てだと私は思っています。
今日も最後までお読みいただきまして、どうもありがとうございます。
